RI職業奉仕委員会に関するつぶやき (その一)
1. RI職業奉仕委員会は、これはRI Vocational Service Committee の訳です。しかし私は、こうは訳したくない、職業サーヴィス委員会と訳したい、と思っています。Vocational Service を、職業奉仕と訳すと、誤解が生じるのでは、と要らぬ心配をしています。奉仕には、無報酬の行為という概念がある。しかし職業奉仕は、自分の職業を通じたサーヴィスであり、むろん報酬が伴います。そして顧客などのサーヴィスになる、職業サーヴィスを行う事により、その企業の繁栄に通じるのです。お医者さんであれば、患者さんのためを一番に考えれば、患者さんが自然に多く集まり、病院が繁栄し、収益が上がるでしょう。
そこから、「He Profits Most Who Serves Best、最もよく奉仕(サーヴィス)するもの、最も得るものが多い」というモットーが生まれます。「最も利益が上がる」、そういう訳も、以前はあったようです。 私は、米山さんが訳されたように、奉仕ではなく、原語のサーヴィスという言葉を使いたい、と思っています。サーヴィスの概念の方が、奉仕の概念より、遥かに広いのです。米山さんの意見については「ロータリーの理想と友愛」ポールハリス著、米山梅吉訳、三省堂、昭和11年発行、をご覧下さい。昔の本で、インターネットで探さないと入手できないでしょうが。なお最近、米山さんの訳に忠実な、「ロータリーの理想と友愛・読本」富田英寿編、(株)四ケ所(電0946-22-2369)、が出版され、良い参考になるでしょう。
2. この委員会は、長年開かれていなかったのが、開催されることになりました。何年の間をおいて開かれたのか、私は調べてはいませんが、ご存知の方はどうかお知らせください。委員会は3年の予定で、最初の年、これは2007‐8年ですが、日本では私に委員のご依頼がありました。そして、2008年の4月に、エバンストンのRI本部で開かれた委員会に、出席しました。私が委員に選ばれた理由は分かりませんが、むろん日本のリーダーの方たちのご推薦でしょう。2007年の規定審議会で、英語で立法案の趣旨説明をし、難しいモットーに関する立法案を通すことができ、その関係でご依頼が来たのか?と想像しています。ちなみにその時の理事のお1人は、渡辺好政さんでしたが、理事会と委員会とのリエゾン役として、委員会に出席されました。なおインドの サブ―RI元会長も、アドバイザーとして出席されました。
3. この小文の題に、「つぶやき」と記したように、系統的な論文形式の記述ではないことをお断りします。この委員会の討議の終わりに、まとめとして、RI理事会に対し、種々の提案をしました。RI理事会は、その一つを除き、すべて受け入れました。その例外は、職業奉仕(サーヴィス)推進のために、試験的に、各ゾーンにコーディネーターを置く、その提案でした。リーマンショックの後で、RIの財政が非常に厳しく、支出削減が大きな命題になっていたために、受け入れられなかったのかもしれません。
4. 出席した各国からの委員は、確か7名ぐらいだったと思います。サブー さんや、渡辺さんもおられる、RI事務局の人も数人いる。会議の最後に、委員一人ずつ感想を求められました。特に覚えているのは、ヨーロッパの方でしたが 「この会議は非常に有益であった、職業奉仕(職業サーヴィス)が良く分かった」という発言でした。正直な発言をされるのに感心しましたが、しかしその方は、すでにRIの理事を務めた方ですから、理事の前に、理解しておいて頂きたかった、と思った鮮明な記憶があります。各国で、良く理解されていない、そういう事なのでしょう。
RI職業奉仕委員会に関するつぶやき (その2)
1 この小文は、RI職業奉仕委員会に関する“つぶやき”の、その2ですから、どうか“その1”と合わせて、ご覧ください。初めから“つぶやく”のも如何かと思いますので、ロータリーの友誌に書いた、「RIVocational Service Committee (職業奉仕委員会) の審議と勧告」と題した小文をご紹介します。 友誌の、平成21(2009)年1月号、横書きの16-17頁に書いています。
2 Code of Ethics 道徳律が、Vocational Service 職業奉仕(サーヴィス)に、密接にかかわっています。つまり職業を通じ、人のためになるには、モラルが高くなければならない。戦前のロータリアンは、この道徳律を非常に大切にしました。例えば古沢丈作さんは、このCode of Ethics に心から賛同し、それを日本的に咀嚼して、「大連宣言」という、すばらしい宣言を書きました(当時古沢さんは、大連RCの会員)。もしご存知なければ、インターネットでお調べ下さい。この道徳律は、手続き要覧から、いつの間にか消えてしまった。 私が委員会で、Code of Ethics の話をすると、RI事務局の方たちは、顔を見合わせて“知らない、聞いたことがない”というので驚きました。ロータリーの歴史を知らない。幸い、サブーRI元会長が、説明されましたが。
3 上記に関連して記せば、古沢丈作さんは、戦後東京RCで、タイから東大への留学生(大学院)を世話され、いわば米山記念奨学会の、生みの親とも言えます。大連宣言を、ご存じない方のために、一二記すと:「すべからく事業の人たるに先立ちて道義の人たるべし。けだし事業の経営に全力を傾倒するは――」。「義を以て集まり、信を以て結び、切磋し琢磨し相助け、相益す。これ吾人団結の本旨なり。然れども―――」
4 話が一寸変わります。 この委員会の勧告の一つは、「会員のロータリー入会の時から始まり、種々の会合(例えば、国際協議会、地区大会、地区協議会など)の際、職業奉仕(職業サーヴィス)についてきちんと説明してほしい」、という事でした。そのためかと思いますが、翌年(2009年)の国際協議会で、サブーさんが、Vocational Service 職業奉仕(サーヴィス)について講演されました。タイトルに、Abandoned Avenue of Service(無視されてきた部門)と書かれていた。日本では大事にされる部門だが、世界ではそうなのか、と思った次第です。世界的に、ロータリーの良き伝統により忠実になり、この部門が無視されることが無いように、願いたいものです。
5 ある発展途上国の委員の方が、各地区に、Ethic Committee 倫理委員会を作ってほしい、と要望しました。Vocational Service とどういう関係があるのか理解しにくい。休憩時間に聞いてみると、「ガバナーに関するいろんな噂(トーク、トーク)がある、それを倫理委員会で、調べてほしい」、という事でした。たしかに、世界各地から、援助金が送られます。一部ポケットに入れるかどうかは別として、ガバナーは、魅力のあるポストなのでしょう。「ガバナーを選ぶときは、必ず複数の候補が出る、そして必ず選挙になる」、との事でした。ここで、マジ・アベさん(RI元会長)が、ロータリー入会の動機を語ったのを思い出します。 本国のナイジェリアは非常に貧しい、どうしたら良いか、援助を受けるために、ロータリーに入った、とのことでした(ロータリーの友誌)。私見を言えば、援助は結構だが、そのための金集めが先行し、ロータリーの100年の伝統が、次々に崩されて行っては困る、そう思っています。
6 委員会は、Classification 職業分類を大切にしてほしい、と要望しました。これに関し思い出すのは、今年(2013年)の規定審議会で、いわゆる専業主婦(全く職業に就いたことのない人)も、会員になれるようになった(立法案13-43)ことです。職業を持たない人が、どうして職業分類が持てるのか、不思議なことだと思っています。ついでに記せば、この一つ前の立法案(13-42)は否決されたが、否定された方は、かって管理的地位にあったが家庭に入り、職についていない人であり、これが通るのならまだ分かる。立法案13-42が否決され、立法案13-43が通ったのは、丁度話が逆ではないか、と思っています。
いずれにせよ、ロータリーの友誌の記載のように「ロータリーの長い歴史が大きく変わった瞬間―」だったと思います(友誌、2013年、6月号、18頁)。 可能であれば、次の規定審議会で、ぜひ改正されることを希望しています。
以上