いわゆる四つのテストは、次の通りです
1 真実かどうか
2 みんなに公平か
3 好意と友情を深めるか
4 みんなの為になるかどうか
シカゴのロータリアンでテイラーという方がいた。後にRI会長になった方である。話は1932年にさかのぼる。1932年に同氏は、ある破産しかけている会社を引き受けその責任者となった。会社は負債が資産を40万ドル超過していた。当時の40万ドルは今の金になおすと、少なくとも400万ドル以上であろう。
どうしたらこの会社を立て直すことができるか、テイラー氏の苦しい日々が続いた。特に競争相手の会社にはない特色を探さなければならない。そして1932年7月のある日、神に祈り、4つのテストを思いついた。この4つのテストに基づいて、会社のありかたを再検討してみた。すると如何に4つのテストの精神が、今までの会社のやり方と矛盾しているかに気づいた。例えば“真実かどうか”という点について、広告一つとってみても、4つのテストの精神からかけ離れていた。
約2ヶ月の間、4つのテストについて深く考え、やれるという自信を得た同氏は、社長として4つの部門の責任者をよんで、4つのテストについて説明し、意見を求めた。その4人のうち1人はカトリック教徒、1人はクリスチャンサイエンス、1人は伝統的なユダヤ教、1人は長老派の信者であった。4人共4つのテスト、つまり 真実(正しいこと)、公正、善意と友情、皆のために、などの精神は、彼らの信仰に合致するし、さらに会社のモラルを高め、ビジネスの成功、発展にもつながると考え賛成した。やがて会社の全従業員は、4つのテストを暗記し、それをもとに行動するよう求められた。
そして、例えば広告は、誇大広告の部分は削られたが、その結果一般の人々の信用をより得る事ができた。商売には競争相手がつきものであるが、競争相手の製品に対する中傷、攻撃は控えられ、相手方の信頼と友情をより得ることができた。そして自分たちと関係する人々の信頼と友情を得ることは、ビジネスの成功に不可欠である事を学んだ。
テイラー氏の会社では、20年間にわたり4つのテストを守ることにより、ビジネスの上で販売は増え、利益はあがった。1932年には破産の一歩手前の会社が業績を回復し、20年間の間に負債を全部返したのみならず、200万ドルの資産をえたし、株主には100万ドルの配当をすることができた。
4つのテストによる金銭以外の報酬はより大きなものがあった。つまりお客さんや、競争相手の人々、一般の人々の善意、友情、信頼をかちとることができた。勿論モラルを高めるという大きな報酬を得た。一方、1943年RIの理事会は、4つのテストを職業奉仕理念として採用したのである。
ロータリー運動のなかで、職業奉仕の重要性については改めて言うまでもない。現在我が国のいろんな分野で、基本的な倫理を忘れた事件が発生している。この小文が、4つのテストと職業奉仕を考える上でお役に立てば幸いである。なお4つのテストの版権は、テイラーさんがRIの会長をしたときRIに譲られ、今日に至っている。